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尾仲浩二『Long time no see』
category: オススメ書籍など
 
ここ数日、毎日のように本が届く。

最近買った物もあるけれど、その多くは随分前に海外サイトで注文したり、
海外の友人に送ってもらうように頼んでおいたものだ。
あまりに前のことで、忘れてしまっているものもある。
でも、昨日届いたこの本は、「いつ届く、いつ届く」と
心待ちにしていたものだった。



尾仲浩二の『Long time no see』



この本の存在を最初に知ったのは、フェイスブックだった。
尾仲氏と共通の知り合いがいて、その人のコメントで知った。
見た瞬間、欲しいと思ったけれど、私家版で流通していないものだと勘違いした。
パリの書店で見つけたとき、体中を一気にアドレナリンが駆け抜ける。
しかし、ところが、なんでだか、ボクは買わなかった。
パリで買えるのなら日本でも買えるだろう、荷物も増えるしな。
そんなくだらないことを考えて、買わずに帰ってしまった。


これがケチのつけはじめだった。


日本に戻ってみると、国内での販売分は既に売り切れていると知られた。
限定120部と少部数しか刷られていない写真集だけになくなるのも早い。
海外サイトでならまだなんとか買えるとのことだったけれど、
英語があまり得意でないボクには、少しハードルが高かった。
尾仲氏の公式HPで、この本がフランス製だと知る。
だからフランスの本屋にあったのか・・・。

そこで、無理を承知でパリに住む友人の写真家に、
買って送ってもらえないかと頼むことにした。
だったらはじめからパリで買っておけば良かったのに・・・。
いまから後悔しても遅かった。




そんなこんなで、なんとか手に入った本がようやく届いた。





写真集は専用ケースに入っていた。






ただし、このケースはパリの友人のお手製。
これがよくできていた。
もし、こんなのに入って売られてたら、大人買いしてしまうだろう。




本は、写真集と呼ぶのがはばかられるほど小さい。




でも、これがまた雰囲気があっていい。
尾仲さんといえば『slow boat』も持っている
『slow boat』もいいけれど、この本も負けてない。
小さい本は保管が難しいのが難点だが、
手にして満足できる「何か」を持っている。
「専用ケース」がA4サイズくらいあったらもっとよかったw







本の内容は、尾仲氏のアルバムにあった子供のころの写真。
それをフォトショップで彩色している。




レトロのな雰囲気でとてもいい。
そして、この本を見てあらためて感じるのは、
いい写真を撮る人は、自分の撮られ方もよく知っているということだ。
そのことは、例えばアラーキーのことを撮った写真が、
どれもすばらしいことからもそのことは証明されている。


尾仲氏は、フランスでは極めて高い評価を得ていた。
アルル国際写真フェステバルの写真集展示にも、この本があった。



『Long time no see』の版元のサイトを見ると、
同様の版型でほかにも別の写真家の写真集が出ていることに気づく。
日本人作家の作品もあるようだ。


そのあたりも一度見てみたいと思った。





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マーティン・パーが選ぶ30冊
category: オススメ書籍など
 

アイルランドで行われたエキシビジョン、
「マーティン・パーが選んだ、この10年の最も優れた写真集30冊」
の図録が届いた。






この本の存在は、しんきんカードのゴールドカード会員誌『はれ予報』の取材で、
マーティン・パー邸を訪れた際に聞いていた。






ライアン・マクギンレイ(Ryan McGinley)の『The Kids are Alright』、
アレック・ソス(Alec Soth)の『Sleeping by the Mississippi』、
石内都(Miyako Ishiuchi)の『Mother's』、
ステファン・ギル(Stephan Gill)の『Hackney Wick』、
ハンス・エジュケルブーム?(Hans Ejikelboom)の『Portraits & Cameras 
1949-2009』といった、憧れの写真集の数々が並ぶなか、
自分の持っている本も何冊か入っていて、少しうれしい気分になる。





川内倫子さんの『うたたね』とか、Michael Wolf の『Tokyo Compression』とか。



それにしても『うたたね』も『Sleeping by the Mississippi』もなぜか
掲載されてうるのは初版版ではない。マーティン・パーは初版本を
持ってたはずなのになぜだろう。
(ちなみに我が家のは初版である。ウッシッシッシ)



川内さん、石内さんを加え、日本人の写真集が4冊も選ばれている。
30人中4人だから、なかなか立派なものだ。
個人的には、ほかにもあれを入れたい!みたいなのがあるけれど、
選ばれているものはどれもいい本ばかりなので仕方がない。
これを選ぶ作業は本当に苦労しただろうなと思う。



知らない本もいくつかあって、見てみたい衝動にかられるけど、
ZINEに近いような本も含まれているようなので、簡単ではない。

もし何かお持ちのものがある方、ぜひご一報くださいまし。


特に『Portraits & Cameras 1949-2009』は探しています!!!




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なまずの行方
category: 病気


 
「劇 メサデルム クリーム」


これがボクに処方された薬だった。


メサデルムはいわゆるステロイド剤の一種。
ステロイドの中でも非常に強い薬の1つだ。


愛猫、シュンギクの飲むプレドロゾニンもステロイドだから、
我が家はステロイド一家ということになる。
服用と塗り薬という違いはあれど、
一生使い続けなければならないことも一緒だ。







先週、東京医科大学にある白斑の専門科を訪れた。
理由はもちろん、ボクの体の中に現れた「白なまず」の正体を知り、
その治療を行うためだった。


先日の皮膚科への訪問で、尋常性白斑であることは、どうやら間違いなかった。

そして、皮膚科ではなんともあっけなく「治療法はない」と言われていた
ことに、ボクは動揺を隠せずにいた。

不治の病。
それなら専門科へ行っても結論は同じじゃないのか。

体は徐々に白なまずに浸食され、やがてゼブラーマンのようにまだらになる。
ボクにできることは、そのときが来るのをただ待つことだけのような気がした。
子供のころによく見た、あの時限爆弾の夢のように、
自分ではどうすることもできない恐怖。そんな絶望感にさいなまれた。


それでも、専門科へ行くことにしたのは、周りの人たちの励ましや
示唆があったからだった。ブログの読者、会社の仲間、嵐のみんな・・・。
沢木耕太郎さんには「最もいい病院を探して、諦めずに治療しなさい」と
励ましの言葉をいただいた。ボクの諦めの悪さをご存知の方だから、
そんな前向きな言葉をかけてくださったのだと思う。




訪れたのは、新宿にある東京医科大学だった。
午後の病院は、午前中のそれとは違い、なんだかひっそりしていた。
東京医科大学では通常予約はとれない。
けれど、白斑科だけは、逆に予約をしなければ
診療をしてもらうことができなかった。
午前中に皮膚科で診察をしてもらい、
その上で、はれて白斑科で診察を受ける権利が得られる。





「手と足かぁ・・・」


ボクの症状を見た若い女医は、体にできた斑点をまじまじと見ながら、
そう呟いた。その声には、明らかな失望がにじんでいた。



「手と足は戻りにくい」


白斑を専門とするその医者はそう続けた。

普通ならがっくり来るところかもしれない。
しかし、「治すことができない病気」と思い、この場所を訪れた
ボクには、返って光明が差し込む思いがした。

色は戻せるのか? 治療は可能なのか? 進行は止められるのか?


しかし、そんな期待はすぐに打ち消される。
診察により分かったことは、以下の3つのことだった。

・進行は止められない。
・根本治療は難しい。
・一生つき合う病気である。




一方で、抜けた色は、ある程度まで戻すことができることがわかった。
もちろん、いろいろな条件はあるし、戻ったとしても完全ではない。

白斑性(ボクのかかっている汎発性というタイプ)は免疫異常のひとつ。
これは皮膚にある色を作る細胞を、白血球が攻撃し壊してしまうことから起る。
色を戻すには、白くなりかけているところにステロイド剤を塗り、
白血球からの攻撃をやめさせ、壊されずに残った細胞に働いてもらうことで、
色を付けていくしか方法がないとのことだった。

攻撃により細胞の数が少なくなっているため、
100%もとと同じ色になることはない。
75%まで戻れば完治。白くなって半年以上経った場所については
色を作る細胞が全滅している可能性が高く、もう治らない。
最初の皮膚科で「古いものは色が戻らない」と言われた理由がわかった。

そして、手や足は、ほかの場所と比べ、色が戻りにくいという。
30%程度戻れば良いほう。
だから、女医は最初に失望のつぶやきをしたのだった。





これから患部が広がってくことはほぼ防ぎようがないようだった。

唯一の予防法はとにかくからだをこすらないこと。

こすったり、かいたりして、体に刺激が与えられると、そこに免疫作用が働く。
白血球が間違えて正常な細胞を攻撃してしまう。
Yシャツを着るだけで、首元に白なまずが出てしまう可能性が高まるという。
顔がかゆくても、できる限りかかないように我慢する。
腕時計も、あまりしないほうがいい。実はもう手首に少し出ているけれど、
さらに広がる可能性があると言われた。



もっと症状が進行した場合には、ほかの治療法(根本治療ではなく
あくまで対処療法なのだけれど)もなくはないという。

その1つが、マイケル・ジャクソンが行ったと言われる薬による漂白。
白くなってしまったところを黒くすることはできないけれど、
まだ正常に残っている色のある部分を、白くしてしまうことはできる。
ただし、副作用もある治療であるため、よほど症状が悪くなったときの
選択肢であるようだ。

マイケルジャクソンも、好きで白くなったわけでない。
別に白人になりたかったわけじゃない。
治療方法として、それしか選択肢がなかった。
それだけのことだったのだ。




白斑は、実際には人口の1%くらいがかかる珍しくない病気。
国によってはその割合はもっと高く、香港では6%程度だという。
しかし、その認知度はあまりに低い。
ボクも自分がかかるまでその存在を知らなかった。
マイケルの病気の話は耳にしていたけれど、心のどこかで、
「白くなりたかったから漂白した」という意見を肯定していた。

マスコミによる「白人化する」「体が白くなる病気」という表現も、
病気の理解を間違ったものにさせているのではないかと思う。

ただ「体が白くなる」とだけ言われれば、全体的に色が白くなるような印象を受ける。
実際には白くなるのは部分的であり、見た目は「まだら」になるのである。
マイケルのかかっていた病気と、白斑の症状とを結びつけていない人は
世の中には多いのではないだろうか。


以前、プロゴルファーの宮里藍ちゃんのお父さんを誌面で紹介しようとして、
ギリギリのとこでやめた経験があった。
理由は、写真で見たその顔が、斑模様だったから。
そのときはこの病気のことは知らなかったし、なんとなく掲載することが
「気の毒」な気がして掲載を見送った。
今思えば、本当に失礼なことをしたと思う。恥ずかしい。
そして、いつかきっとボクも「気の毒」と思われる側に立つのだと思う。


それでも、ボクはもういい歳だから、きっと我慢できるだろう。
もし、思春期にこの病気にかかっていたら、どうなっていただろうか。
そう思うだけでぞっとするのである。



どうせ治らない病気なのだから、ボクは自分の症状をどんどんオープンにしていきたい。
そして、それが少しでも白斑の認知につながれば良いなと思う。

ボクはその任務を与えられたことを、少しだけ誇りに感じる。







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ニューヨーク進出
category: シャシンボン ニジュウヨンエイチ


とうとうニューヨーク進出を果たしました!



お店はずっと置いていただきたいと思っていた有名店「Dashwood Books」

まじうれしいっす!


ダッシュウッドのスタッフの皆さん、話をつないでくださった佐久間さん
そして、皆さんを紹介くださった川内倫子さんに感謝です!





パリではColetteやLe BALなどの有名店で扱ってもらっていますが、
アメリカ大陸では初めて。USAではDashwoodが最終目標だったので
これ以上販路を広げるつもりはありません。
もう社内の在庫もほとんどないですし。


USAにお住まいの方は、ぜひ覗いてみてくださいまし〜!





Dashwood Books
33 Bond Street New York NY 10012
(212) 387-8520





写真集の専門編集者でもなく、会社的にもまったくノウハウのないなかで、
みなさんに助けていただいてここまで来ることができました。
本当にありがとうございます。





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とうとう嵐がやってきた!
category:
 

これが最後の嵐ネタになるだろう。




それは、今週火曜日の夕方のことだった。

週末の涼しさが嘘であったかのように、再び熱を取り戻した東京。
それでも、ひところの我慢ならない不快さはなりを潜めていた。
いくぶん過ごしやすい気候に、秋の訪れを感じる昼下がり。
と同時にボクはあることを思い浮かべる。



秋の訪れ、9月、嵐のコンサート。




今年のボクの夏は、この連想ゲームを反芻する毎日だった。


秋の訪れ、9月、嵐のコンサート。


ネットオークションを見れば、
嵐のチケットの多くが10万円を越す値をつけている。
中には40万円近くまで値上がりしているものもあった。
それが、実際に取引されている価格なのか、それとも単なる嫌がらせの結果なのか、
本当のところはボクにはよく分からないけれど、1つだけ確かなのは、
手に入れることがとても困難な状況にあるということだった。



この1ヶ月というもの、ボクは朝目覚めると、まずパソコンに向かった。
夜のうちに、嵐のチケットを譲ってくれる人から連絡がきていないか。
ただそのことを確認するためだけに、ボクは眠い目をこすりながら、
パソコンを立ち上げる。そして、ためいき。ここまでがワンセットだ。




もう諦めてるよ。

ボクは画面に向かってひとりごちてみる。
それでも、状況は何一つ変わることがない。
会社で例の女の顔を見ると思うだけで、憂鬱になった。






そして、運命の火曜日を迎える。

それは、次のモメンタムに掲載するタイアップの打ち合わせをこなし、
席に戻ったときのことだった。





椅子の上に何か置いてある。
それは紙袋に入っていた。





『ガンツか?』

ボクが最初に思いついたのは、漫画の『ガンツ』だった。

先日彼女に借りた『ガンツ』は31巻までしかなかった。
きっとここまでしか出版されていないのだろうと、
自分を納得させようと思ったが、先がどうしても気になる。
もしやと思ってググってみたら、32巻まで出ていることがわかった。



彼女もまだ持ってないんだろうな。



そう思い込もうとしたのだけれど、ボクにはどうしてもできなかった。
なぜなら、彼女の机の上には、伏せるようにして、1冊のガンツが
置いてあったからだ。たぶんあれが32巻であるに違いない。
その疑惑は、ロス疑惑よりも現実味のある疑惑だった。

嵐のチケットを入手しないことには、32巻は借りられない。
いつしか、ボクはそんな強迫観念にかられるようになっていた。


だからこそ、椅子の上に紙袋を見つけたとき、
ボクはとっさに『ガンツ』のことを思い浮かべた。
もしかしたら、恩赦があったのかもしれないと。




しかし、封筒の中身は『ガンツ』ではなかった。



そこにあったのは、なんと嵐のチケット!!





というのならば、どんなに幸せだろう。
そんなことがあるわけがなかった。
それでも、もしかしたらという小さな望みを持って紙袋の中をのぞく。
中にあったのは、もっとすごいものだった。





そう、嵐からのお見舞いである。




そんなバカな、とあなたは思うだろう。
ボクも最初はそう思った。
しかし、その包装紙には、しっかりと嵐からの贈り物である旨が書かれていた。



いたずらだよ。


そんなふうに信じたい気持ちもわかる。
だが、包装紙には伊勢丹の銘が入っている。
いたずらで、こんな恥ずかしいことを一流デパートの人に頼める人が、
この世にいるとはとうてい思えなかった。



嵐もチケットが手に入らないことを、申し訳ないと思っているんだな。
それとも、ボクの病気のことをブログで知ってくれたのか。



そう思うと、ボクの気持ちは少しだけ楽になった。






ボクは会社で騒ぎが起らないように、そのお見舞いの品をそっと鞄にしまった。






夜、自宅に戻り、破れないように包装紙を丁寧にはずす。
最後までチケットが手に入らなかったならば、
この包装紙を彼女に渡して許してもらうよりほかにない。
『ガンツ』32巻を借りるために、ボクにできることはそれだけだった。



さすがに今をときめく嵐のことだけはある。
包装紙の下からは、桐箱に入ったお菓子が出て来た。




イチゴや抹茶の味がついたクッキーが6袋。
おお、抹茶味が松本君かな、イチゴ味は桜井君か、
そんなことを考えながら、ボクは1つ1つを味わった。
嵐は6人組だったけか・・・?




それにしても、1つ不思議なのが、どうやってこの紙袋を
ボクの席まで届けたのかということだ。
袋には宅急便の伝票のたぐいは一切ついていない。
郵送で送られた可能性は限りなくゼロに近かった。
日経エンターテイメントの編集部員に託したのかもしれないけれど、
それならメッセージの1つくらいはあってもいいはず。
いくら顔見知りの品田さんとて、恩も売らずにおいて行くはずがない。
もしかして、嵐のメンバーの誰かが直接?
いや、それこそ大騒ぎになるだろう。



誰がどのようにしてこのお見舞いを届けてくれたのか。
今となってはそれを知る術もなかった。



夏の日の小さなミステリー。



ボクの2011年夏は、こうして静かに幕を閉じるのであった。








さて、こうなったら、嵐にお礼を言わずにはいられない。
となればやはりチケットが必要、ということになりそうだ。
届いたチケットが、席がイマイチなので売りたい!
もっと良い席を買うための資金を作りたい!!
そんな思いに駆かられた方は、ぜひボクまでメッセージをいただきたい。
できれば2枚。よろしくお願いします。



合掌。






このブログは、一部、妄想の世界に身を委ねた部分があります。
けしからんやつだ! と2ちゃんとかで悪口はかかないでね。
こう見えて、ボクはけっこうナイーブなのだ。






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一流とはさりげないものだ
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一流とはさりげないものだ。


そのことをボクに教えてくれたのは、時計ならパティックフィリップ。
宿では俵屋。そしてホテルならパークハイアットということになるだろうか。



随分前のことだけれど、ボクはこの3つのうち、パティックフィリップ以外の
2つをほぼ同時期に体験した。まだ20代であったボクにとって、それは大きな
出費だったし、分不相応のものだった。



当時、マネー編集部から、おとなのOFF編集部への異動が決まり、
ボクは少し不安を感じていた。
その頃のおとなのOFFは、徹底した覆面取材を売りにしていたからだ。



果たしてボクに覆面取材で正確なジャッジメントができるものだろうか。



モノに関しては、それなりに色々なものを見て来たという自負がった。
でも、食や宿泊施設に関しては、年齢に応じた経験はあったけれど、
それ以上のものはなかった。それだけに、一流のサービスの善し悪しなんて
自分に理解できるとは到底思えなかった。


そのことを当時は単なる同僚であった今の妻に相談すると、
それならそれぞれの分野のトップを体験すればいいじゃない、と言われた。
自分の中で基準を作る必要はあるけれど、平均がここだと決めるのは難しい。
ならば、トップを知ることで、それと比べ何がどのように足りないかを
判断の材料にしていくのがいいんじゃないかと。
そして、トップさえ知っていれば、いくら敷居が高い料亭や宿でも、
恐れる必要はなくなるはずだと。




あのときの経験は、今のボクにとって、とても大きな財産となっている。
貯金はなくなったけれど、それでもそれ以上の意味があったと思う。

もちろん、自分の判断が正しいと、胸を張って言い切れるほど
今もうぬぼれてはいない。でも、最低限の判断材料は手に入れたと思うのだ。



そしてそのときに学んだことこそ、本当に上質なサービスというものは、
上質であることを押しつけられない、空気のようなものであるということだった。
何がいいとはっきりと説明はできないけれど、居心地がいい。
派手なファインプレーを主張されることはなく、それでいてエラーはしない。
そういうものなんじゃないかと思う。
イチローはムダなダイビングキャッチはしない。難しい捕球も何気なくこなす。



今日、久々にパークハイアットを訪れ、ボクはそのことを思い出した。
そこには、あのときの変わらないパークハイアットの姿があった。
あれから、随分と時間が経ち、世界の色々なホテルに泊まったけれど、
いまも、あの時の感動を、ほかのホテルでは味わってはいない。







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ペラペラと、いやパラパラと。
category: オススメ書籍など
 

『客の多い穴』というフリップブックを手にしたのは09年のことだった。



フリップブックとはいわゆるパラパラ漫画のこと。

ボクも、中学のころには教科書の端を使って作ったものだった。
いや、今だって、たまに作る。
先日は、「写真本24hの編集後記展」で展示したスクラップブックにも
写真によるパラパラ漫画を載せたりした。


フリップブックには、紙で作る本の面白さがある。





それほど数は多くないけれど、ボクは何冊かのフリップブックを持っている。



例えばGILBERT&GEORGEによる『Lost Day』(オリジナルは1972年刊)。



ギルバート&ジョージはほかにも何冊かフリップブックを出しているけれど、
ボクが見たことがあるのは、どれも動きが非常に少ない。
フリップブックの特徴をまったくいかさない辺りが、彼ららしい。





ヘルシンキの版元から出た『VOLCANO』というこの本も、お気に入り。


シュールな漫画を読んでいるような楽しさ。
この版元は他にも数多くのフリップブックを出している。
確かユトレヒトで購入したんじゃなかったかと思う





そして、『客の多い穴』とその続編の『めからかいこうせん』。


この本を書店で最初にみかけたときには、けっこう驚いた。
ボクの持っているほかのフリップブックが平面での展開であるのに対し、
特に『めからかいこうせん』などは3D的な見え方をするからだ。


この青幻舎が発行するフリップブックのシリーズは、
いまでは人気化し、多くの書店で取り扱いがある。
続編もゾクゾク出ている。
累計10万部を突破しているというからすごい。




今日、青幻舎から会社宛にこのシリーズの2冊が届いた。
「ボクがフリップブックを集めていることを、誰がチクったんだ?」
と思ったけれど、誰もチクるはずはない。
誰にも言ったことがないのだから。

封筒にはリリースが入っており、そこにメッセージが書かれていた。

「はじめまして。軸原ヨウスケさんからのご紹介で案内させて頂きます」


軸原さんは、随分前に知り合いに紹介してもらった折り紙作家。
折り紙の可能性を広げるその作品に感銘を受け、
当時編集をしていた『日経おとなのOFF』で何度か企画を出したけれど、
ボクの力不足で、結局実現することができなかった。
(今はなき『日経Kids+』編集部に紹介したけれど、形になったのだろうか?)


そんな軸原さんが、このフリップブックに関わっていたとは驚いた。
今年の6月に発行され、早くも重版となった2冊。
「猫ストーカー」の浅生ハルミンさんによるものだ。


誰がボクがネコ好きだとチクったんだ!




これがまた、なかなかいい。
特に個人的にはやはり『猫のあいさつ』かな。




書店で見かけた方は、ぜひ手に取ってくださいまし。


そして、もし家にいらないフリップブックがある方、
ぜひ高藤宛にお送り下さいw

もちろん、写真集も大歓迎ですw




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本に挟まっているもの。例えばプラニーメーターの使い方
category: 雑談

少し前に『SWICH』の「ロバート・フランク」号を買い直した。
昔持っていたけれど、引っ越しの際に整理してしまっていたのだ。


※繰上和美撮影の表紙。カッコイイ。


家に帰り、その本を開くと、中から1通の封筒と1枚の紙が出て来た。


封筒のほうは、焼き物の個展へのインヴィテーション。
紙のほうは、「プラニーメーターの使い方」というタイトルがついていて、
機器の使い方が詳細に説明してある。

プラニーメーターとは紙に描かれた絵をなぞり、その面積を測る装置。
と、いまネットでググったら出て来た。
普通の人には必要のない、特別な機器のようだ。




思い起こせば、以前、同じく古本で買った『coyote』にも
不思議な紙が挟まっていたのだった。



ボクは、こういう古本に挟まっている紙が好きだ。
前の所有者の履歴が残っているようで、何だか楽しくなる。
松浦弥太郎とは違って、ボクの場合は本に挟まれているメモ限定だけど。


プラニーメーターを使ってみたい。


それにしても、なぜスイッチパブリッシングの本には
何かが挟まっていることが多いのか。
そこに何か特別な理由があるのか、それともたまたまか。
ボクにはよくわからない。





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ほの字にほの字とはいかなかった件
category: 雑談
 
昨夜行ったひどい店のことを思い出して目が覚めた。


頼んだビールがものすごく生臭かった。
それでも、もったいないし、我慢して飲もうかと思った。
でも、無理だった。
仲間にニオイを嗅いでもらうと、よくここまで飲めたね、と感心された。


ボクはもう一杯ビールを追加で頼むと、
お店の人にそっと「ニオイが変ですよ」と言って、飲みかけのビールを渡した。
そのときには責めるつもりはまったくなかった。責めるつもりはないけれど、
それでも一応、伝えておいた方がよいと思ったのだ。
(実際、何も言わないままにしようか悩んだあげくの一言だった)

バイトであろうその店員は、それを持って厨房へと消える。
それからしばらくして店長がやってきた。



「うちではグラスも別に洗っていますし・・・」


店長の一言目はそれだった。

ボクは最初、彼が何を言っているのか分からなかった。
しばらく聞くうちに、彼の主張が理解できてくる。


うちではグラスは料理の皿などとは別に洗っているし、
ニオイが付くはずがない、臭うというのはおかしい、と。



別にクレームを入れてどうこうするつもりはない。
でも、ニオイがおかしいことだけは事実だった。
ボクはただ、それに気づいてもらえればよかった。
しかし、店長はいきなり、自分たちの正当性を説明しはじめたのだった。



「すみません、ニオイは嗅がれましたか?」

ボクはそう尋ねる。
彼は色々と言い訳をした後に、結果的に「ニオイはしない」と言った。


驚いた。そしてあきれた。
想像だけれど、彼はニオイを嗅いでいないと思う。
もし嗅いでいたなら、臭わないとはいえないはずだ。
それくらい、ボクが途中まで飲んだビールのニオイは強烈だった。
店長が行く前に、バイトの店員がジョッキを片付けてしまったのかもしれない。
いや、100歩譲って、本当に彼には臭わないのだとしたら、
逆にボクはその店の料理を食べたくない。
そこまでニオイに鈍感な人が切り盛りする店ってどうなんだろうと思うから。

これ以上話しても気分が悪くなるだけなので、
ボクらは店を後にすることにした。
気分を変えるために入った焼鳥屋は、小さくて汚い店だけど
とてもいい店だった。ビールもいい香り(当たり前だけど)。




原発もそうだけれど、人は誰もが間違う。
ボクも先日、仕事でミスを犯した。
でも、問題はそれが発覚したときにどう対応するかだとう思う。

人間は弱い。攻撃されたくない。だからこそ、隠す。何もなかったと装う。
ことなかれ主義。そして隠蔽体質。その気持ちはボクにもよく分かる。
でも、これでは何も解決されない。反省もない。


恵比寿の居酒屋「ほの字」。
もうボクは二度と行くことはないだろう。
ビールで起きたことが、料理で起きない保証もないし。



氷水を背中からぶっかけても、
かけた店員がへらへら笑ってタオルで拭くだけで誰も謝りもしない、
店長はバックヤードにいるのに、出てくることさえなかった
中目黒のカレー店、アンティ・ロミィ以来の衝撃だった。
(かなり根に持っている!w)


※そういえば、小川さんと五十嵐さんと一緒にいったファミレスでも
 同じようなことがあったことを、書きながら思い出した。



別に小汚くたっていい。気持ちのよい店で食事がしたい。
それだけのことが、どんどん難しくなっている気がする。
なんだか悲しいことだな。




そして一方で、ボクは心に強く思う。
自分はけっしてあちら側に行ってはならないと。
(自戒をこめて)





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最近の仕事
category: オススメ書籍など
 

しんきんカードの会員誌『はれ予報』の最新号が出来上がってきた。





今回は写真特集(右)。
表紙の写真は『写真本24h』にも参加していただいている宮本敏明さん。



ちなみに左は7月に出たドクター向けライフスタイル誌『MOMENTUM』。
話は書いた記憶があるけれど、画像をアップしていなかったので、
この場を借りて簡単に紹介させていただく。
今回の表紙の椅子はオリヴィエ・ムルグによるモントリオール。
しかもラーセンファブリックが張られた超レアものだ。
アストレアギャラリーからお借りした(売り物です!)。

撮影はこちらも『写真本24h』参加作家の塚田直寛さん


モメンタムの中身の写真も少しだけ。
クルマページはこんな感じ。
写真は若手の注目株、五十嵐隆裕さんによる力作だ。



石川直樹さんの旅の記事も。






さて、話を『はれ予報』に戻す。

今回の写真特集は、大きく分けて『撮る』と『観る』の2部構成。

撮るほうは、「動物」「風景」「人物」「食」の3つのテーマで
それぞれ有名写真家にマル秘テクニックを紹介してもらっている。
ご参加いただいた写真家は、岩合光昭さん、三好和義さんの大御所お二人に加え、
『未来ちゃん』の川島小鳥さんと『おべんとうの時間』の阿部了さん。





観るほうは、アルル国際写真フェステバルの話を中心に、
ヨーロッパ人の写真の楽しみ方を紹介。

中でも見所はこちら。



マグナムの大物にして、世界有数の写真集コレクターである
マーティン・パーさんのご自宅潜入。

撮影は川内倫子さんにお願いした。

いやぁ、この組み合わせ、写真好きにはたまらないでしょ?


このほか、テレビドラマ『鈴木先生』で人気に火がついた長谷川博己さんの
インタビューがあったり、お薦め写真集をオンサンデーズ、BOOK246、
COW BOOKSなど国内外の有名書店に挙げてもらったりもしている。

なかなか楽しい写真特集になっていると思うんだけれど、どうだろう。




写真絡みでは石川直樹さんによる新連載もスタート。
「フォトエッセイ南極物語」




もちろん、みうらじゅんさんによる好評連載、
「僕宝 仏像の旅」もある。
今回はボクの地元、愛知県岡崎市が誇る運慶仏、滝山寺の梵天像だ。
今年、みうらさんはこの梵天像に会いに行ったそう。
現在31体しか確認されていない運慶仏が3体もあるお寺なのだけれど、
地元の人もめったに行かない。

地元の人にこそ知ってもらいたい仏像だ。



『はれ予報』は会員誌なので、書店で買うことはできない。
昨年作った、みうらじゅんさんによる表紙で話題になった仏像特集の際には、
書店からも問い合わせがあったようだけれど、残念ながら卸すことはできなかった。

読むためにはカードを作るか、定期購読するか。
あとは各しんきんの店舗で目にすることができるかもしれない。


とても良い雑誌なので、ご覧いただけるとうれしい。





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