あと少しすると、今年もあの声がラジオから流れてくる。
クリスマスイヴの夜に、というかクリスマスになった瞬間に始まる、
沢木耕太郎さんの「ミッドナイトエクスプレス 天涯へ」。
ボクにとって、この瞬間は待ちに待った楽しみであり、
1年を振り返るきっかけであり、恐怖でもある。
この1年間、自分は何をなし得ただろうか。
ラジオを聞く時間は、否応無しに、その現実に向き合うことになる。
そして、思ったほどの成果を上げられていないことを確認し、
落ち込むのが常だ。
それでも、このラジオはやはり必要なものである。
来年こそは、と自分を奮い立たせてくれるから。
ラジオまでは少し時間があるけれど、
今年1年を振り返り始めている。
仕事でもいろいろあった。
いろいろあったけれど、ボクにとっての今年最大の事件は、
やはりシュンギクの死だと思う。
妻は、去年のクリスマスを思い出し、泣いている。
そこにはシュンギクの面影がしっかりとある。
シュンギクの死は、今でもリアルである。
寒くなれば、その存在感を増す温かな生き物。
最近になって、妻が泣くことが増えた。
でも、今のボクはただ落ち込むばかりではない。
シュンギクは、ボクらのために死んでくれたのだと思っているから。
シュンギクが生きていたならば、
義母を長い旅に連れて行くことはできなかっただろう。
いまの義母の体調を考えると、あと少しでも遅かったなら、
海外へ連れて行くのは難しかったように思う。
シュンギクは、自らを犠牲にして、最後の親孝行をするチャンスを
ボクらに与えてくれたのだ。
ありがとう、シュンちゃん。
今年のボクは、仕事では大きな成果を出せなかったかもしれない。
それでも、シュンギクに恥をかかせないくらいのことは出来たようにも思う。
今のボクを見て、沢木さんは何と言うだろうか。
少し怖い気もするけれど、来年は久々にお会いしたいな。
シュンギクのおかげで少しだけ成長することができたボクを、
沢木さんにも見てもらいたい気がする。