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米沢の旅 相良人形を求めて
category: ネコ
 
雪国とそうでない場所との境界線は福島と米沢の間にある。

そんなことを知った旅だった。


在来線の線路を走る、ちょっと呑気な新幹線が福島を出ると、
田んぼの周りに残る雪がチラホラと目に入るようになる。
残雪の量は徐々に増え始め、視界一面を覆い尽くすようになるころには
雲行きが徐々にあやしくなってきた。

3月の頭に訪れた米沢は、
まさに「一寸先は白魔の闇」というに相応しい猛吹雪だった。

駅を降り立ち、食事をとろうとするが、
地図では駅前にあるはずのレストランを見つけることが出来ない。
3m先が見通せないほどの豪雪に、生まれて初めて本物の雪国を感じた。
スキー場を除けば、これほどの雪に降られた経験はボクにはなかった。


米沢を訪れたのには明確な理由があった。
ちょうど3週間前にこの世を去ったシュンギク。
その遺骨の前に立たせる御前立ちとして、
ネコを象った相良人形を購入したい。
そう思い立ったボクらはその製造元である工房を訪れることにした。
少しでもシュンギクに似た人形を選びたい。
そんな思いがボクらにはあった。

食事をなんとかすませ、タクシーに乗り込むと行き先を告げる。
運転手は「あぁ、相良さんのとこね」とすぐに理解してくれた。
この調子だとけっこう大きな工房なのかな、
一瞬そう思ったのだけれど、それがすぐに間違いだと気づく。
クルマに乗ること数分。
たどり着いた工房は、歴史こそあれ、普通の民家だった。


タクシーを降りると、あらためて雪の多さに驚かされる。


「降ろした雪が家より高くなり、人々は、二階から出入りするようになります」

とは、地元出身の古物商、木村東介の名著『米沢の雪』の一節。
本を読んだ時には、まさかご冗談を、と思ったのだけれど、
目の前にある家々はまさにそれに近い状態だった。



タクシーを降り、玄関へと向かう。
両サイドは雪の壁。
雪がなければどのような庭なのか。
そんなことを想像することすらできない。

玄関につくと、お母さんが迎えてくれた。
「こんたら日に来て、大変だったでしょう」
相良人形の7代目、相良隆さんの奥様は、
そう言うとボクらを2階の部屋へと招き入れた。
「上着は来たままでいいから、ストーブにあたってて。
いまおでん持って来るから」と言い残し、部屋を出て行った。

数分後に戻って来た奥様の手には玉コンニャクと玉子のおでん、
くるみ寒天、リンゴにお茶が。
まさにこれぞ、東北のもてなしだ。
テレビなどで見て知ってはいたが、
実際に体験して見るとやはり感動する。
残念ながらコンニャクが食べられないボクは、
奥様に悟られぬよう最大の注意をくばりつつ、
連れの皿にひとつずつコンニャクを移動させた。
正直言うと、リンゴも苦手だった。
音を聞くだけでゾゾゲ(鳥肌)が立ってしまう。
アイコンタクトで妻にリンゴを食べるよう指示すると、
玉子のおでんと、くるみ寒天をしっかりいただいた。
どちらも温かみのあるおいしさだった。

世間話をしながら2杯のお茶を飲み干し、やっと本番。
人形の話にうつる。


ボクらの目当てはもちろん「猫に蛸」。
そこにある多くの人形は7代目である隆さんの手によるものだが、
人気のある「猫に蛸」に関してはいまは息子の8代目が作っていると言う。
隆さんは病気をされていて、一線から退かれているとのこと。
だから売れ線は既に在庫もつき、新たな作り手に委ねられた。
言うまでもなく8代目が作る「猫に蛸」も十分にチャーミングだった。


なぜにネコと蛸なのか?
たまたまなのだけれど、シュンギクが最初に買ったおもちゃが蛸だった。
そして、ボクはよくシュンギクの頭にのせて遊んでいた。
だからこの人形の存在を知ったときは驚いた。
蛸とネコの組み合わせの理由について奥様に尋ねると、
「ネコは招き猫でしょう。蛸はご多幸でしょう。縁起がいいの」
と教えてくれた。なるほどである。


しっかりと時間をかけてシュンギクの御前立ちを選ぶと、
続けて別の人形を物色した。
東京では「猫に蛸」が有名な相良人形だが、
実はほかのモチーフもかなりカワイイ。
東京の人形屋さんで買うのよりも随分とリーズナブルであることもあり、
結局、金太郎やら、招き猫やら、ダルマやらと、次々に買ってしまった。


それでも少しの自制心が働いてしまい、
買い残したものがかなりあった。


「今度は春にまた来ます」


悔しさを押し殺しつつ奥様にそう告げると、
ボクらは後ろ髪を引かれながら工房を後にした。





米沢は駅のプラットホームからして大雪だった。






外を5分もあるかないうちにこうなる。
これでもかなり雪を払った後の写真。
既に繊維が凍っている。
米沢が山形でも有数の豪雪地帯なのだと知ったのは、
隣町へと移動したあとのことだった。






住宅街に突如現れる看板。






道路から工房へのアプローチ。
雪の壁に挟まれた天然回廊の先に工房がある。





東北のもてなし。
心から温まる。






相良のお母さん。






猫に蛸






招き猫






金太郎(その後ろには桃太郎も)。






ダルマ。















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Comment.
相良人形の長女の岡田その子と申します。結婚したので岡田の姓になっております。
今はネットの時代ですね!このブログを発見して、実家の事が懐かしく上手に紹介して下さっていて、思わずコメントさせていただきました。

タクシーで到着、普通の民家でビックリ!には笑ってしまいました。
今は8代目の弟が頑張ってくれています。

相良人形を愛していただきましてありがとうございます。
2017/02/03 9:43 AM, from 岡田その子
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